大野真澄 連載

第38回“槍ケ岳登山のコト”その2

2004.11

 先月からの続きである。この夏、7月の下旬からの槍ケ岳への初登山を経験したときのコトである。しかして、登山というものが、これ程過酷なモノだとはつゆ程も考えなかった浅はかな自分に怒りさえ感じてしまった訳でありまして、言い替えれば、大変な「出来事」というか「事件」とでも言ったほうが良いくらいの経験でありました。

 約25kgのザックを背負い、登山の出発地、新穂高温泉に着いたのは、新宿からあずさ9号で松本へ。松本からは、バスにて丁度午後3時ごろに到着。実は新宿を出る時点で、同行の常富さんから、ザックの中身が多すぎて重すぎる感じがするから、少し荷物を減らした方が良いのではとのことで、せっかく用意してきたポカリスエットの粉末やら、栄養補給ゼリー、それと山小屋で読もうと思っていた文庫本、ウォークマンとカセット数本、着替え用のシャツなど約4~5kg分を出発地の新穂高温泉のコンビニ?(お土産屋かなあ?)から、宅配便で家に送り返す作業をしたのだが、実はこれがこれから先に起り続ける不安の数々の最初の出来事だった。

 まずは初日の宿泊地、わさび小屋への約4kmのなだらかな坂道を上り始めたのだが、50mもいかないうちに、軽くしたはずのザックが全身におおいかぶさって来て足が思うように前へ進まないのである。こんなに平坦で舗装こそされていないが、車も通っているごく普通の坂道としかいいようのない場所でもうキツイのだ。

 先述のとおり、普段運動することなどほとんどないのだが、今回は一応一ヶ月程前から、スクワットを一日30~50回はこなして万全? を期して臨んだはずなのに、どうしたことだ? もう体が音をあげている。同行の常富さんと吉田さん(今回初登場!!「海は恋してる」のザ・リガニーズの元メンバー《ちなみに常富さんも元メンバー》で、現在は森山良子さんや平原綾香さんの所属するレコード会社ドリーミュージックのマーケティング部勤務)はどんどん先を歩いている。

 常富さんは登山歴20年。吉田さんも、今回の槍ケ岳のような高い山への挑戦はないが、結構いろいろな山を踏破した経験の持ち主であるから当然といえば当然だが、2人の速度に全くついてゆけない。

 しかし、それでもこれから先に起り来る地獄から比べれば、まあ“へ”のようなものなんだが、何とか追っかけ、ついてゆくしかない!!それしか考えていなかった。

 そういえば、ここですでに「ウォークマンで音楽を聴き乍ら楽しく登山を!!」なあ~んてことが全く不可能であることを思い知らされてしまった。もう、この時点ですでに体が音楽を受けつけるような状態からは遠のいていた。常富さんの「ウォークマンなんか、いらないヨ!!」の一言が、何と重い意味を持っていたことかっ!!それでも歩かねばならないと、我が身にムチを打ち約2時間弱で、夕方5時前にはわさび小屋に到着出来た。ザックを下ろした時の安堵感というか、急に体が軽くなった爽快感を味わった時には、何かひとつの試練を乗り越えたような大袈裟な気分にさえなっている僕でありました。

 しかし、明日からの未知なる地獄の世界を知らない能天気な“奴”も、そこにいた訳であります。

(以下次号)

2007-11-20 17:39:34投稿者 : 大野真澄
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